2017.11.21.火

業界ニュースまとめ読み〜11月号〜


みなさんこんにちは。今月も業界にまつわるビッグニュースがありましたね。
このコーナーでは業界関連の旬なニュースをいくつかピックアップし、私ミスターDの私的な見解をコメントしていきます。

【テクノロジー】

ユニクロ、世界でICタグ 瞬時に精算 在庫管理も 
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO23145150W7A101C1MM8000/
アマゾンのレジ無し店舗は開店準備ほぼ万端
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-11-15/OZH1CJ6JIJUP01

 ユニクロがICタグの全店導入に踏み切った。数百億円の投資になるという。ICタグはコストがネックになっており、ユニクロのようなSPA業態でないと導入が難しい。ドラッグストアのようなNB商品がメインの小売店においてはタグ設置にメーカーのメリットがないため小売側での設置となるが、物流上の問題と、コスト負担に小売店が耐えられない。加えてOTC医薬品は有資格者による対面販売が義務付けられているため、無人レジにすることが制度上不可能といった点もあり、小売店、特にドラッグストア業態において無人化イノベーションは相当先の未来の話と言える。翻ってAmazon。「Amazon Go」はICタグによるセルフレジとは全く異なる独自のソリューションを用いており、「レジにスキャンさせる」という工程自体が不要で、棚から欲しい商品を取ってそのまま店を出るだけという画期的なシステムとなっている。目下試験展開中だが、実用化に向けて着々と準備が進んでいるようである。導入コストもICタグ全品設置よりも現実的であると思われ、AWSのように小売企業にシステムを外販すれば一気に無人化店舗が普及しそうだ。個人的にはこちらの未来に期待したい。

 

【広告規制】

葛の花機能性表示食品 一斉に措置命令
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO23205020X01C17A1CR8000

 当ニュース6月号でピックアップした「スギ薬局、機能性表示食品の不適切広告で謝罪」が、5ヶ月の時を経て驚きの結末を迎えた。「措置命令が出ていないのになぜか急に謝罪」したとして当時業界関係者は騒然となったが、結局謝罪もむなしく措置命令を食らうことになってしまった。しかもスギ薬局だけでなく、同じく葛の花食品を販売していた他社も含め、計16社に対し一網打尽に措置命令がくだされた。2014年にも「空間除菌事件」の際に17社に一斉措置命令が発動したことがあり、大量措置自体にはそこまでの驚きはない。本件の驚愕ポイントは「エビデンスがある機能性表示食品に初めて措置命令が出たこと」「指摘内容が広告表現の印象に対するものだったこと」の2点である。
 通常ダイエットサプリなどに措置命令が下される際には、不実証広告規制によって「合理的根拠がない」との判断によるものである。「ダイエットサプリでスリムに!」というような広告の場合「スリムに」という表現そのものに対するNGではなく、「スリムになる根拠を合理的に示せ」と言ってくるのだが、きちんとしたエビデンスが用意できず結果措置命令に至るケースがほとんどだ。しかし、機能性表示食品は事前にエビデンスを消費者庁に提出し、審査を通過したものだけが商品化できるというルールのため、発売する際にはすでに「合理的根拠」を伴っている。今回摘発された16社も、同じエビデンスを元に広告を制作していた。どの広告も基本的にはエビデンスに基づいた事実を述べており、合理的根拠がないとは言えない。そこで今回繰り出された新技が「印象規制」である。各メディアで報道された見出しの多くは「飲むだけで痩せるはNG」といったものだったが、各社の広告クリエイティブで「飲むだけで痩せる」と明記しているものはない。「運動×食事規制しなくても!」という表現を用いている広告は確かにあるが、「飲むだけで痩せる」とは書いていない。こういった微妙な表現は今までグレー領域でセーフだったのだが、今回は「飲むだけで痩せるとは直接言っていないが、そういう印象を与える意図を持った表現もNG」という手法で切り込んできたのだ。スギ薬局に至ってはそれすらなく、単に太ったお腹のイラストを掲示していただけなのだが、「イラストがデブを強調しすぎ」「運動が必要という注釈がない」ということで執行されているとみられ、かなり厳しい基準を後出しジャンケンしてきたという印象がぬぐえない。
 成長戦略の一環として導入された機能性表示食品制度だったが、フタを開けてみればダイエット市場を破壊する執行者だったという笑えない状態になりつつある。消費者庁いわく「適度な運動と食事制限をしないと痩せない。食品で痩せるのはありえない」とのことだが、そんなことはみんなわかった上で、それでも何かにすがりたいという思いでダイエットサプリを買うのではないだろうか。情報の足りない消費者を守るために悪質な広告を是正することはもちろん正義だと思うが、行き過ぎた規制は「何も言えない難解な広告」を大量生産することにつながり、結果的に市場の縮小を引き起こしかねない。この事例を機に、「広告の印象規制」が一層強まっていくことに危惧を覚えている。

   

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